テーブルのお困りごとは、この3つ

日常のさまざまな暮らしのシーンで、テーブルは汚れ、キズが付き、傷んでいきます。最初は気づかなくても、次第に小さな気がかりのようなものが重なっていき、テーブルの「お困りごと」へと変わります。

けれど、テーブルが傷ついたり汚れたりしないようにいつも気をもんでいると、「ダイニングテーブルを使わないのがいちばんの対策」なんてことになりかねません。大切なのは、汚れても、キズがついても、「またきれいにできる」という安心感の方ではないでしょうか。細かなルールや決まりごとをたくさん増やしていくより、心置きなく自由にどんどん使っていきましょう。

こうした安心感のために、まずはどんなお困りごとがあるのかを整理してみます。

テーブルのお困りごと、つまり傷みは大きく分ければ「シミ・キズ・ヨゴレ」この3つに集約され、それぞれ

・シミ:テーブル表面で起こる「化学反応」
・キズ:テーブル表面の「へこみ」
・ヨゴレ:テーブル表面の「付着」
と分けられます。もうすこし具体的に見ていきましょう。

テーブルのお困りごと、
「シミ」について

〈どんな時にできる?〉
・蒸し暑い日の昼間、冷えた麦茶が入ったコップをそのまま置いていた。
・鍋を囲んだ夜の翌朝、置きっぱなしにしていた卓上コンロに気がついた。

「シミ」とは、木の表面や導管(養分・水分などの通り道)の中で生じた「化学反応」です。よくある輪っか状のシミ(いわゆる輪ジミ)は、テーブル天板の表面の油分とコップ底の水の反応によって生じます。こうした表面的な輪ジミは、白っぽい色のシミになります。

一方で、より厄介なのが黒っぽいシミです。鉄などの金属と水が木の表面で起こす化学反応によるもので、テーブルの上に濡れた空き缶などを一晩中置きっぱなしにしてしまった…なんて時にできるシミです。ヘアカラー剤などの薬品によるものなんかもあります。

【注意!】これらのシミは、簡単なおうちメンテナンスの範囲ではなかなか消せず、〈修理〉が必要になります。

また、表面だけでなく、無垢の木の導管内で起きてしまう場合もあります。テーブル天板の木の中に水分が沁み込んだことによるもので、木の色より少し濃い濡れ色になることが多いです。この沁み込んでできたシミは、メンテナンスでいい感じになるのであまり気にする必要はありません。

ほかには熱によるヤケと呼ばれる跡があります。さすがに高温の鍋などを直接置く方はいないとは思いますが、熱によって表面の塗膜が融解したことにより変色が起きています。ただし「温かいコーヒーカップや湯呑を直接置いただけでもシミができた」と言われるようなケースは、熱そのものが原因ではなく熱された容器が底で起こした結露によって生じた水分がテーブル表面の油分と反応してできたものがほとんどです。前述の油分と水分との反応ですね。

テーブルのお困りごと、
「キズ」について

〈どんな時にできる?〉
・突然の電話対応で慌てて強く裏紙にメモを書きつけてしまった。
・朝食時に知らず知らずカフスボタンが当たっていた。

「キズ」とは、改めて書けばテーブルの表面に加えられた力でできた「へこみ」や「くぼみ」、「削れ」などとなります。大きな当たり傷(へこみ)ができてしまったり、湯呑の裏がザラザラだったり、カバンの裏の金具で擦ってしまったとかで、できる擦り傷や目に見えないヘアラインのキズなどが挙げられます。柔らかなスギやヒノキ、イチョウなどの場合には、特に注意が必要です。

ただし前章でも触れたとおり、キズは適切に残すことでむしろ愛着に変わる可能性のあるものです。付けるつもりはなくても、突然できてしまうのがキズ…。その時には気落ちしてしまうかもしれませんが、メンテナンス次第では独特な味にも変えていけます。

テーブルのお困りごと、
「ヨゴレ」について

〈どんな時にできる?〉
・楽しい夜に、赤ワインをこぼしてしまった。
・目を離した隙に、子どものマジックペンがお絵かき帳からはみ出していた。

「ヨゴレ」は、普段づかいでもっとも目にするものではないでしょうか。とは言っても、実はもっとも見えづらく、気付きづらいテーブルの傷みでもあります。食べこぼしや飲みこぼしは大体見ればすぐに分かるヨゴレですね。マジックやボールペンなどの筆記具や新聞のインクうつりなども挙げられます。

しかし見えづらいヨゴレの最大の原因の一つは、意外にも「テーブルの水拭き」。清潔に保つために行っているはずの「水拭き」こそが、シミよごれの最大原因となりうることが分かってきました。この「水拭きはしてはいけない」については、こちらで詳しくお話しすることにします。

テーブルの傷みの原因である「シミ」「キズ」「ヨゴレ」も、長くテーブルと一緒に過ごした日々があったからこそです。実はこの傷みによる「暮らしの跡」があるからこそ、新品より使い込んだ道具の方が愛着が湧くとも言えます。さて、ここまででお困りごとの原因を整理してきました。ここからは、テーブル表面に塗られた「塗料」についてお話ししたいと思います。

大切な家具をもっと大切にする

家具を大切にする。って「たくさん使うことだ」と私たちは思っています。たくさんドシドシ使っていると、当然汚れるし傷みも出てくるもの。家具を単なる消耗品だと考えると、古くなったり傷んできたら「そろそろ買い替えよー」って気持ちにもなりますよね。ただやっぱりもう簡単に物を捨てる時代ではないと思います。ヒダコレでは、みなさんに「この家具は捨てたくない」って思ってもらえるようにするためには何ができるだろう、と考えてみました。

実は「テーブルの傷み」は簡単なメンテナンス作業でかなりきれいにすることができます。あくまでもみなさんに「たくさんドシドシ使ってほしい」。ならば、できてしまった「テーブルの傷み」をみなさん自身できれいにしてもらったらいいんだ!と気づきました。

ぜひみなさんに、簡単にできるテーブルのメンテナンスを知っていただきたいと思います。

「メンテナンスする暮らし」とは、つまるところ手間をかけることそのものが楽しみとなる暮らしです。たまにそこに居る家具を気にかけ、すこしの手間をかける。それが楽しみであると知っている。そんな、とても身近なところから始まる家具との関わり方です。

せっかく選んでもらった大切なテーブルだから、できれば愛着を持ち続けてほしい。これは私たち作り手の願いです。たくさん使うほどにこれまでよりもっと大切な家具に育ててほしい。でもまったく難しくなくて、ちょっとした視点を持って、また誰でも簡単にできる作業だけで、自分の家具にもっと愛着が湧き、さらに大切な存在に変わっていきます。

私たちは〈メンテナンス〉を、ご家庭の「お部屋でできる範囲の作業」と定義します。わざわざテーブルを動かす必要はなく専用の工具もほとんど要らないため、簡単にできてしまいます。そんなひと手間、小さな技術をこの記事ではご紹介します。ちなみに、「お部屋ではできそうもない作業」は〈修理〉として棲み分け、その場合には工房へ持ち帰りきれいに修理して再納品させていただく工程をご提案しています。

さて。こうした〈メンテナンス〉や〈修理〉によって、「もう汚くなってしまったから」「古くなってしまったから」という理由で捨ててしまうテーブルを救うことはできるかもしれません。しかし、そもそも私たちが勧める〈メンテナンス〉は、元の新品同様に戻すためにしているわけでもありません。

長くテーブルを使っているとシミや汚れがついたり、キズが付いたりします。それらの中にはお子さんがまだ小さなころに噛んだキズだったり、初めて書いた落書きだったり、よくみると思い出の一コマもたくさんありますよね。

こうした長い時間の積み重ねは使い込んだ風合いとなって、更に素敵なテーブルになっていくものです。今までのテーブルのキズや傷みを残しつつ、すべてをきれいさっぱり無くしてしまうことではなく「愛着」として昇華させること。

でも、毎日の忙しい暮らしの中で、愛着を保ち続けるのは時に難しい。だからこそ、愛着を時々「思い出す」ためのひと手間や、そのひと手間が楽しくなるようなお手伝いを私たちはしたいと思っています。

テーブルはいつも家のまんなかにひっそりと居ます。楽しい時間のみんなの笑顔のために。すこしつかれたあなたをやさしく受け止めるために。

No.1では、これまで私たちに寄せられたテーブルのお困りごとを「シミ、キズ、ヨゴレ」に分類し、まずはメンテナンスよりも前になされる「塗料の選択」が重要であることを整理します。

お困りごとの原因が、実は意外な毎日の習慣にあったことをご紹介したのが、No.2。お使いいただくなかで、そもそもお困りごとを増やさない工夫ができるのです。

そして、No.3では具体的なメンテナンス方法について、各工程をだれでも簡単にできるようわかりやすく解説しています。

最後にNo.4では、すこし広い視点から〈メンテナンス〉の可能性をお話ししています。

ヒダコレ家具が発信する「ヒダコレノート」は、いつでも使えるインフラのような存在を目指しています。

気になったページから、気軽にお読みください。

4/26(金) – 5/28(火)
一枚板テーブル展を開催します

ヒダコレ家具には、全国から集められた一枚板がたくさん揃っています。
ダイナミックな曲線の木目が特徴のケヤキをはじめ、きらきらとした杢が美しいトチや優しい雰囲気のあるクスなど。どれも唯一無二の存在感ある一点物です。
その一枚板を皆さまに見て、触れていただけたらという想いから、『一枚板テーブル展』を開催いたします。10人掛け用の大きなダイニングテーブルや、カウンター・デスクにぴったりサイズの一枚板など。個性豊かな形、表情の一枚板をぜひ見にきてください。

★期間中一枚板をご成約いただいた方へ、下記のいずれかお好きな方をプレゼント!

①飛騨の広葉樹で作ったオリジナルカッティングボード

②木製ミニツリー製作キット

★無料テーブルメンテナンス講習会を開催します
無垢材でできた家具は、自然の風合いや温かみを感じることができ、使い込むほどに愛着が増していきます。
オイル塗装の家具は、定期的にメンテナンスをすることによって長くご愛用いただけるのですが、メンテナンスというと、どうしても「難しそう」「面倒だなぁ」と思われてしまう方もいらっしゃるようです。
そこで、おうちで簡単にできる無料メンテナンス講習会を開催いたします。


まずは「テーブルを泡で洗う」簡単な作業から始まります。

★無料テーブルメンテナンス講習会のご予約について
【日時】①5/11㈯ 11:00~ ②5/18㈯ 11:00~
【場所】ヒダコレ家具店舗前

★無料テーブルメンテナンス講習会 当日の流れ
①メンテナンスについての講義(10分ほど)
②実際にメンテナンス作業をしてみます(20分ほど)
③作業の後はお茶を飲みながら質疑応答(10分ほど)
(全行程を1時間程度で予定しています)

※予約制となります。①②どちらかご都合のいい日時で下記からご予約ください。
TEL: 0120-690-315
MAIL: info@hida-collection.shop

※メンテナンスしたい物をお持ちいただいても結構です。(ご自身でお持ちいただける小さなテーブルやカッティングボードなど、オイル塗装の木製品)

おうちで簡単にできるメンテナンス方法については、こちらでもご紹介しています。
[YouTubeで公開中] おうちで簡単にできる / 一枚板と無垢テーブルのメンテナンス

店舗、リニューアルしました
1階内装編

2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」から「ヒダコレ家具」と改め、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとの繋がりを考えられるお店を目指しエントランス・内装をリニューアルしました。

前回の「店舗、リニューアルしました。エントランス編」に続いて、今回は店舗1階のリニューアルについて。

店舗リニューアルの一番大きなポイントになった店内を斜めに横断する什器をご紹介させてください。

この什器は、稲架(ハサ)と農業で使われる鉄のパイプ、広葉樹の木で作りました。

今ではお米を作る時に”ハサ掛け”をすることが少なくなっています。昔からお米作りをされている農家さんには先祖代々受け継がれてきたハサが沢山残っていたんですね。この稲架を何かに使えないかな?と設計士さんが提案してくださいました。里山や自然を身近に感じられる什器ができ、とても嬉しく思います。

什器内に見える角材は広葉樹の木です。この木は家具を作った残りの木を使うことにしました。木といっても様々な種類があります。それぞれの角材に特徴を書いてみました。全部同じ”木”ではないことが分かるとより家具を好きになってもらえる、そんな気がしています。

この什器をお店の中心にし、お店に並ぶ家具や一枚板である木が、どのような姿・形で地に根を下ろしていたのかを考えていただけるようなお店づくりを目指しました。

一枚板をお探しになっているお客様の中には「もう少し幅の広いのない?」「節はこんな感じが良い」など具体的なこだわりを持ってお探しになっていることも少なくありません。

幅が広く成長するために掛かる年月、節はどのようにしてできるのか、を少しでも感じ取っていただけると、ヒダコレ家具はとても嬉しいのです。「家具への愛着を持っていただきたい」というヒダコレ家具の思いがあります。そんな思いを店舗を横断し、どこからでも見えるこの什器に込めました。

什器を中心にした店舗1階のポイントは、お客様が居心地良く、考え事ができる空間を目指した事です。1番にお客様の暮らしを考る場所であるために「お客様に寄り添うってどういうこと?」「どういう空間だと愛着をもって家具を選べるかな?」など、スタッフで話し合いながら、一つ一つ決めていきました。

そして、ヒダコレ家具でお馴染みの「一枚板の家具」や、飛騨で活動する作家さんの作品を集めた「飛騨の手仕事」。さらに今回のリニューアルで新しく「小さな図書館」を作りました。

店内奥の壁面には、多くの一枚板を木の表情が分かりやすいように並べています。

一枚板は一つ一つ表情が違うので、お客様がお気に入りの一枚板をお選びいただけるよう、見やすく分かりやすい並べ方にもスタッフのこだわりが詰まっています。

多くの一枚板からお気に入りが見つかるように、壁にそのまま立てかけるのではなく、少し角度をつけて立てかける什器もスタッフのこだわりです。

ヒダコレ家具がずっと取り組んでいることがあります。それが飛騨の手仕事です。

飛騨の匠の歴史から続く工芸・民芸の文化と、飛騨の豊かな自然の中で丁寧につくられた作品には、作家さんの個性と温かみが溢れています。

木工や陶芸、ガラスなど様々な作家さんが一つ一つ思いを込めて、手作業で丁寧に作っているクラフト作品を知っていただき、”ちょっと暮らしや心が豊かになるような”飛騨のいいものに触れてもらいたいという思いがあります。

そんな飛騨の手仕事では、作品を一つ一つスタッフが直接セレクトしています。気になる作品がありましたら是非ご説明させてください。作品との良い出会いのお手伝いができると嬉しいです。

新しく作った小さな図書館は、少しずつですが「暮らしを考えるヒント」になる本を集めようと思っています。

小さな図書館は自由に使っていただきたい場所です。例えば、本を読んだり、お子さんがお絵描きしたり、座って店内を眺めたり。どんな使われ方がするのかスタッフもドキドキの小さな図書館です。

名前はまだありません、これから皆さんと一緒につくっていきたい。そんな場所です。

ちょっと余談。

店内のリニューアルから少し遅れて、お会計・ご相談カウンターができました。前は奥まった位置にあったので分かりにくかったですが、今回のカウンターでお客様が迷うことも少なくなったかな?と思います。

暮らしのことや森のこと、お客様と一緒に家具づくりのことを考えられるお店に少しでも近づけたかなと思っています。

家具だけではなく、作家さんの作品や、少し暮らしについて考えたいという時も、是非ふらっとお立ち寄りください。

新しくなったヒダコレ家具でお待ちしております。

家具屋だけど家具屋じゃない唯一無二の店づくり_澤秀俊さんインタビュー

2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」改め「ヒダコレ家具」としてリニューアルオープンしました。リニューアルにあたって、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとがつながっていくような店にしたい、その構想に協力頂いたのが澤秀俊設計環境 / SAWADEEです。

今回は、澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表の澤秀俊さんにお話を聞きました。

澤秀俊さんの事務所外観


––リニューアルした店舗は、明るく開放的で、車窓からこのお店を見つけた人もついつい二度見してしまう興味を惹く店構えになっていて見違えましたね。今回のリニューアルのポイントを教えてください。

 外観は、入りやすさを重視して、開放的でわかりやすく、キャッチーな雰囲気を意識しました。白く塗ることで明るさを確保し、車窓から見えた時に「なんだろう」って思って入りたくなるような”ゲート”としての役割をもつエントランススペースを設けています。

ヒダコレ家具 ショップ外観

––そのゲートとなるエントランスから店内を横断する什器が一際目を引きますね。

 一般的なゲートは、面・個体としての存在感がありありとしているイメージを持っていますが、ヒダコレ家具のゲートは透明な背景という真逆の印象にしたかったんです。そして、ハサと農業用の支柱パイプ、広葉樹の木端を材料として作っているので、よく見てみれば見るほど、里山との繋がりも感じられる。さらに飾り方を場面場面で工夫することができるので、その時々で違った姿を発見できる仕様になっているんです。

ヒダコレ家具 ショップのエントランス風景

ハサ、農業用の支柱パイプ、広葉樹の木端を材料として作られた店内から外まで続く什器

––このお店の内と外を横断する什器のアイデアはどの段階から浮かんでいたんですか。

澤 この什器のアイデアは最初の打ち合わせ段階から思い浮かんでいました。
ヒダコレ家具のコンセプトは、澤秀俊設計環境や、ライフワークとして関わっているNPO法人活エネルギーアカデミーがやっていることにすごく近しいことを大事にしているなと、打合せの段階で感じていました。

店舗リニューアル打ち合わせの様子

 だからこそ、ヒダコレ家具には、林業を生業にするメンバーがいたり、普通の家具屋ならいないような人材がヒダコレ家具の事業に関わっている。仕事に対する想いは、すごくよく伝わってきました。
方向性を話し合う中で、いろんな物をまとめられるような中心(芯)になるものが要るかなというのは直感的に思ったんです。ただそれは強い確固たるものではなくて、スカスカで、大きくて、いろんなものが絡められる何か-、、考えていたときに関わりシロがあるでかいオブジェクトを作りたいと思い至りました。一番長さが取れる直行方向45度に置いて、お店が面している国道からも見えるように配置しています。

店内に什器が伸びる様子

––この什器のおかげで、念願の丸太のディスプレイすることが叶いました!丸太の横にあるベンチに座りながらお店の様子を眺めることもできていいですね。

澤 ベンチに使われているモミの木は、澤秀俊設計環境の近くで育ったものなんです。ベンチは、実際にストックしてある材料からヒダコレ家具の皆さんに選んでもらってこのモミの木に決まりました。樹皮が残っている部分もあり、とても可愛く仕上がっています。

エントランスにあるベンチ

コーヒーを飲みながら、犬の散歩がてら座って休憩も

––今回のリニューアルで澤さんがこだわったポイントを教えてください。

澤 大切にしたのは、それぞれのスペースに居場所を作ることです。これはヒダコレ家具だけではなく、自分が設計するときに必ず意識することなんですけど、回遊性を確保することはもちろん、お客様がスタッフや他のお客様のことを気にせずに過ごせるように設計しています。

店内を横断する什器

––「居場所」というと、ただ広さを確保するだけじゃないってことですか?

澤 そうですね。僕が3年暮らしていたベトナムは、半屋外の屋根の下でお風呂の椅子みたいなのに座ってコーヒー飲んだり、ビール飲んだりしているんです。日常の街の風景がお店から人が溢れ出している感じでリアカー引いてるおじちゃんおばちゃんがたくさんいます。

澤秀俊がインスピレーションを受けたベトナムでの日常の様子

澤 居場所(人の溜まり場)をつくる=入りやすさをつくる、ことだと思っていて、一枚板を見に行きたい!と思わないと行けないお店ではなくて、ふらっと店先まで見にこれる気軽さをつくりたいと思い、居場所を意識した設計にしました。

––ありがとうございます。最後に、これからのヒダコレ家具に一言

澤 ただの家具屋ではないところをどんどん進めていって、山と繋がってものづくりしていることをみんなに伝えて、みんなを山側に引っ張っていくような活動に転換してほしいですね。僕たちが活エネルギーアカデミーとしてやっている”ジョブエネ”も市民のみんなが気軽に山に入れるプラットフォームを担えるようにと活動を始めました。

活エネルギーアカデミーに関わっている皆さん

家具屋だと自分のブランドを前面に押し出していくのが一般的ですが、ザ・家具屋じゃない在り方を模索して展開していってほしいです。工房・山林ツアー、家具屋にきたつもりが全然違う世界に出会う。ものづくりの現場を身近にみれる。そういうのって重要だと思うんです。一般的な家具ユーザーは、椅子・テーブルを買ってそれを家で使っているだけで、それが何の木で、どこで育ってなんて全然わからない。ヒダコレ家具の皆さんがずっと伝えたい、やりたいと思っているのはそういうところだと思うので、それをどんどん面白い展開に、思っても見ないような家具屋になることを期待しています。

想いは同じだと思うから、色々できるといいなと思っています!

夕暮れのヒダコレ家具の様子。