2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」改め「ヒダコレ家具」としてリニューアルオープンしました。リニューアルにあたって、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとがつながっていくような店にしたい、その構想に協力頂いたのが澤秀俊設計環境 / SAWADEEです。
今回は、澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表の澤秀俊さんにお話を聞きました。
––リニューアルした店舗は、明るく開放的で、車窓からこのお店を見つけた人もついつい二度見してしまう興味を惹く店構えになっていて見違えましたね。今回のリニューアルのポイントを教えてください。
澤 外観は、入りやすさを重視して、開放的でわかりやすく、キャッチーな雰囲気を意識しました。白く塗ることで明るさを確保し、車窓から見えた時に「なんだろう」って思って入りたくなるような”ゲート”としての役割をもつエントランススペースを設けています。
––そのゲートとなるエントランスから店内を横断する什器が一際目を引きますね。
澤 一般的なゲートは、面・個体としての存在感がありありとしているイメージを持っていますが、ヒダコレ家具のゲートは透明な背景という真逆の印象にしたかったんです。そして、ハサと農業用の支柱パイプ、広葉樹の木端を材料として作っているので、よく見てみれば見るほど、里山との繋がりも感じられる。さらに飾り方を場面場面で工夫することができるので、その時々で違った姿を発見できる仕様になっているんです。
––このお店の内と外を横断する什器のアイデアはどの段階から浮かんでいたんですか。
澤 この什器のアイデアは最初の打ち合わせ段階から思い浮かんでいました。
ヒダコレ家具のコンセプトは、澤秀俊設計環境や、ライフワークとして関わっているNPO法人活エネルギーアカデミーがやっていることにすごく近しいことを大事にしているなと、打合せの段階で感じていました。
澤 だからこそ、ヒダコレ家具には、林業を生業にするメンバーがいたり、普通の家具屋ならいないような人材がヒダコレ家具の事業に関わっている。仕事に対する想いは、すごくよく伝わってきました。
方向性を話し合う中で、いろんな物をまとめられるような中心(芯)になるものが要るかなというのは直感的に思ったんです。ただそれは強い確固たるものではなくて、スカスカで、大きくて、いろんなものが絡められる何か-、、考えていたときに関わりシロがあるでかいオブジェクトを作りたいと思い至りました。一番長さが取れる直行方向45度に置いて、お店が面している国道からも見えるように配置しています。
––この什器のおかげで、念願の丸太のディスプレイすることが叶いました!丸太の横にあるベンチに座りながらお店の様子を眺めることもできていいですね。
澤 ベンチに使われているモミの木は、澤秀俊設計環境の近くで育ったものなんです。ベンチは、実際にストックしてある材料からヒダコレ家具の皆さんに選んでもらってこのモミの木に決まりました。樹皮が残っている部分もあり、とても可愛く仕上がっています。
––今回のリニューアルで澤さんがこだわったポイントを教えてください。
澤 大切にしたのは、それぞれのスペースに居場所を作ることです。これはヒダコレ家具だけではなく、自分が設計するときに必ず意識することなんですけど、回遊性を確保することはもちろん、お客様がスタッフや他のお客様のことを気にせずに過ごせるように設計しています。
––「居場所」というと、ただ広さを確保するだけじゃないってことですか?
澤 そうですね。僕が3年暮らしていたベトナムは、半屋外の屋根の下でお風呂の椅子みたいなのに座ってコーヒー飲んだり、ビール飲んだりしているんです。日常の街の風景がお店から人が溢れ出している感じでリアカー引いてるおじちゃんおばちゃんがたくさんいます。
澤 居場所(人の溜まり場)をつくる=入りやすさをつくる、ことだと思っていて、一枚板を見に行きたい!と思わないと行けないお店ではなくて、ふらっと店先まで見にこれる気軽さをつくりたいと思い、居場所を意識した設計にしました。
––ありがとうございます。最後に、これからのヒダコレ家具に一言
澤 ただの家具屋ではないところをどんどん進めていって、山と繋がってものづくりしていることをみんなに伝えて、みんなを山側に引っ張っていくような活動に転換してほしいですね。僕たちが活エネルギーアカデミーとしてやっている”ジョブエネ”も市民のみんなが気軽に山に入れるプラットフォームを担えるようにと活動を始めました。
家具屋だと自分のブランドを前面に押し出していくのが一般的ですが、ザ・家具屋じゃない在り方を模索して展開していってほしいです。工房・山林ツアー、家具屋にきたつもりが全然違う世界に出会う。ものづくりの現場を身近にみれる。そういうのって重要だと思うんです。一般的な家具ユーザーは、椅子・テーブルを買ってそれを家で使っているだけで、それが何の木で、どこで育ってなんて全然わからない。ヒダコレ家具の皆さんがずっと伝えたい、やりたいと思っているのはそういうところだと思うので、それをどんどん面白い展開に、思っても見ないような家具屋になることを期待しています。
想いは同じだと思うから、色々できるといいなと思っています!