大切な家具をもっと大切にする

家具を大切にする。って「たくさん使うことだ」と私たちは思っています。たくさんドシドシ使っていると、当然汚れるし傷みも出てくるもの。家具を単なる消耗品だと考えると、古くなったり傷んできたら「そろそろ買い替えよー」って気持ちにもなりますよね。ただやっぱりもう簡単に物を捨てる時代ではないと思います。ヒダコレでは、みなさんに「この家具は捨てたくない」って思ってもらえるようにするためには何ができるだろう、と考えてみました。

実は「テーブルの傷み」は簡単なメンテナンス作業でかなりきれいにすることができます。あくまでもみなさんに「たくさんドシドシ使ってほしい」。ならば、できてしまった「テーブルの傷み」をみなさん自身できれいにしてもらったらいいんだ!と気づきました。

ぜひみなさんに、簡単にできるテーブルのメンテナンスを知っていただきたいと思います。

「メンテナンスする暮らし」とは、つまるところ手間をかけることそのものが楽しみとなる暮らしです。たまにそこに居る家具を気にかけ、すこしの手間をかける。それが楽しみであると知っている。そんな、とても身近なところから始まる家具との関わり方です。

せっかく選んでもらった大切なテーブルだから、できれば愛着を持ち続けてほしい。これは私たち作り手の願いです。たくさん使うほどにこれまでよりもっと大切な家具に育ててほしい。でもまったく難しくなくて、ちょっとした視点を持って、また誰でも簡単にできる作業だけで、自分の家具にもっと愛着が湧き、さらに大切な存在に変わっていきます。

私たちは〈メンテナンス〉を、ご家庭の「お部屋でできる範囲の作業」と定義します。わざわざテーブルを動かす必要はなく専用の工具もほとんど要らないため、簡単にできてしまいます。そんなひと手間、小さな技術をこの記事ではご紹介します。ちなみに、「お部屋ではできそうもない作業」は〈修理〉として棲み分け、その場合には工房へ持ち帰りきれいに修理して再納品させていただく工程をご提案しています。

さて。こうした〈メンテナンス〉や〈修理〉によって、「もう汚くなってしまったから」「古くなってしまったから」という理由で捨ててしまうテーブルを救うことはできるかもしれません。しかし、そもそも私たちが勧める〈メンテナンス〉は、元の新品同様に戻すためにしているわけでもありません。

長くテーブルを使っているとシミや汚れがついたり、キズが付いたりします。それらの中にはお子さんがまだ小さなころに噛んだキズだったり、初めて書いた落書きだったり、よくみると思い出の一コマもたくさんありますよね。

こうした長い時間の積み重ねは使い込んだ風合いとなって、更に素敵なテーブルになっていくものです。今までのテーブルのキズや傷みを残しつつ、すべてをきれいさっぱり無くしてしまうことではなく「愛着」として昇華させること。

でも、毎日の忙しい暮らしの中で、愛着を保ち続けるのは時に難しい。だからこそ、愛着を時々「思い出す」ためのひと手間や、そのひと手間が楽しくなるようなお手伝いを私たちはしたいと思っています。

テーブルはいつも家のまんなかにひっそりと居ます。楽しい時間のみんなの笑顔のために。すこしつかれたあなたをやさしく受け止めるために。

No.1では、これまで私たちに寄せられたテーブルのお困りごとを「シミ、キズ、ヨゴレ」に分類し、まずはメンテナンスよりも前になされる「塗料の選択」が重要であることを整理します。

お困りごとの原因が、実は意外な毎日の習慣にあったことをご紹介したのが、No.2。お使いいただくなかで、そもそもお困りごとを増やさない工夫ができるのです。

そして、No.3では具体的なメンテナンス方法について、各工程をだれでも簡単にできるようわかりやすく解説しています。

最後にNo.4では、すこし広い視点から〈メンテナンス〉の可能性をお話ししています。

ヒダコレ家具が発信する「ヒダコレノート」は、いつでも使えるインフラのような存在を目指しています。

気になったページから、気軽にお読みください。

4/26(金) – 5/28(火)
一枚板テーブル展を開催します

ヒダコレ家具には、全国から集められた一枚板がたくさん揃っています。
ダイナミックな曲線の木目が特徴のケヤキをはじめ、きらきらとした杢が美しいトチや優しい雰囲気のあるクスなど。どれも唯一無二の存在感ある一点物です。
その一枚板を皆さまに見て、触れていただけたらという想いから、『一枚板テーブル展』を開催いたします。10人掛け用の大きなダイニングテーブルや、カウンター・デスクにぴったりサイズの一枚板など。個性豊かな形、表情の一枚板をぜひ見にきてください。

★期間中一枚板をご成約いただいた方へ、下記のいずれかお好きな方をプレゼント!

①飛騨の広葉樹で作ったオリジナルカッティングボード

②木製ミニツリー製作キット

★無料テーブルメンテナンス講習会を開催します
無垢材でできた家具は、自然の風合いや温かみを感じることができ、使い込むほどに愛着が増していきます。
オイル塗装の家具は、定期的にメンテナンスをすることによって長くご愛用いただけるのですが、メンテナンスというと、どうしても「難しそう」「面倒だなぁ」と思われてしまう方もいらっしゃるようです。
そこで、おうちで簡単にできる無料メンテナンス講習会を開催いたします。


まずは「テーブルを泡で洗う」簡単な作業から始まります。

★無料テーブルメンテナンス講習会のご予約について
【日時】①5/11㈯ 11:00~ ②5/18㈯ 11:00~
【場所】ヒダコレ家具店舗前

★無料テーブルメンテナンス講習会 当日の流れ
①メンテナンスについての講義(10分ほど)
②実際にメンテナンス作業をしてみます(20分ほど)
③作業の後はお茶を飲みながら質疑応答(10分ほど)
(全行程を1時間程度で予定しています)

※予約制となります。①②どちらかご都合のいい日時で下記からご予約ください。
TEL: 0120-690-315
MAIL: info@hida-collection.shop

※メンテナンスしたい物をお持ちいただいても結構です。(ご自身でお持ちいただける小さなテーブルやカッティングボードなど、オイル塗装の木製品)

おうちで簡単にできるメンテナンス方法については、こちらでもご紹介しています。
[YouTubeで公開中] おうちで簡単にできる / 一枚板と無垢テーブルのメンテナンス

へちかんだグラスが生まれるまで

安土忠久さんの代表作「へちかんだグラス」の写真

岐阜県高山市出身の硝子作家・安土忠久さんの作品は、代表作のグラスに見られる通り『へちかんだ』味が多くの人を魅了しています。

『へちかんだ』は飛騨地方の方言で「ゆがんだ」「曲がった」というような意味。
自然のゆらぎがそのまま形になったへちかんだグラスには、温かみと自然のエネルギーがあふれ出ています。

ガラスのお皿の写真

「言葉では何とも説明のできないへちかんだグラスの絶妙なフォルムは、いったいどうやって生まれたのだろう、、、」

そんな素朴な疑問から安土さんご本人に尋ねてみました。

安土忠久さんの工房外観

偶然生まれた心惹かれるフォルム

昔、安土さんの知り合いに吹きガラスの体験でグラスを作ってもらったことがあったそうです。もちろん初心者なので均一な形にならないのですが、その中の一つにとても初々しい出来のグラスがあり、安土さんは心惹かれました。

そして、自分でもこんな作品が作れないかとあれこれ模索してみたのですが、何度やっても思うような作品がつくれない日々が続きます。

安土忠久さんが炉でガラスを扱っている様子

安土忠久さんの工房内

安土忠久さんの工房内

あるときガラスで指を切ってしまい、不自由な手で吹き竿を回しグラスを作っていたら、動きがぎこちないためストレートなラインが出せませんでした。しかし、偶然生まれたこのいびつなフォルムが、以前見た心惹かれたグラスと一致したのです。

熱いガラスを扱っている様子 その1

このケガをきっかけに、均一に回さなければへちかんだフォルムを作れることがわかったのですが、偶然気づいたものを完成させるためには更に何度も何度も回し続けなければなりませんでした。そして数多くの試作と月日を重ねた結果、ついにへちかんだ表情のグラスを完成させることが出来たのです。

熱いガラスを扱っている様子 その2

作り手の道具

最初は偶然生まれたへちかんだグラス。

今では出来あがりのフォルムをきちんと頭の中で描き、ガラスの厚いところと薄いところが出来るよう吹き加減を計算しながら回して作られています。こうして安土さんは、へちかんだ表情のグラスを自分のものにして世に送り続けているのです。

多くの人を魅了する作品

安土忠久さんの代表作「へちかんだグラス」の写真

へちかんだグラス特有の味のあるゆがみは、何とも愛らしさがあり多くの人を惹きつけます。

確かな審美眼と精緻な文章で日本の美を追求する作品を残した随筆家・白洲正子さんもこのへちかんだグラスを愛用されていたお一人でした。

暑い夏に涼の気分が味わえる安土忠久さんのガラスのうつわ。お昼時に家族でいただくそうめんにもピッタリ。

へちかんだグラスだけでなく、どの作品もどれをとっても世界に二つとない特別な逸品ばかり。手にとった時のぽってりとした重量感、器の縁が唇に触れた時の優しさと温かみに心安らぐ、それが安土さんが作り出す作品なのです。

安土忠久さんご本人の写真

安土さんは作られた作品について

「作ったものは、僕の手を離れていけば誰が作ったかわからなくなるけれど、その存在感と使う人の関係は何年も続いていく。僕はそれが嬉しい」と言われます。

この言葉が意味する通り、ヒダコレで安土さんの作品をお買上げいただいたお客さまからは
「孫が遊びにきたとき、一度へちかんだグラスでジュースを出したら、それからは『あのコップで飲みたい』って言うの」
「母が生前大切にしていた安土さんのワイングラスを私も使いたくって、、、」
「昔働いていたカフェで使っていた、トールグラスに注いだアイスティーの美しさが忘れられない」
「息子が成人したので、安土さんのウィスキーグラスで一緒に酒を飲みたい」
など、話題が尽きません。

安土忠久さんの代表作「へちかんだグラス」の写真

こういうお話を聞くたびに安土さんにもお伝えすると
「お客さんと僕の作品のエピソードを聞くと力が湧いてきて、制作の原動力になるんだよ。ありがとう!」
と優しい笑顔でこたえてくれます。

多くの人を魅了し、愛されている作品には、安土さんのこんなお人柄もあらわれているのかもしれませんね。

安土忠久さんがつくるガラスの作品の数々 その1

安土忠久さんがつくるガラスの作品の数々 その2

ヒダコレでは常時安土忠久さんの作品を展示させていただいています。
飛騨高山にお越しになる機会があれば、ぜひ店舗にもお立ち寄りいただき、作品を手に取ってご覧になってみてください。

店舗、リニューアルしました
エントランス編

2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」から「ヒダコレ家具」と改め、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとの繋がりを考えられるお店を目指しエントランス・内装をリニューアルしました。

今回からいくつかに分けてお送りする「店舗、リニューアルしました。」の第一回です。初回になるエントランス編では、お店の顔になるエントランスのリニューアルについてお伝えできたらと思います。

エントランスのリニューアルで一番変化が分かりやすいのがお店の明るさです。リニューアル前は車道との間に壁があり、薄暗い印象でしたが、思い切って壁をなくすことで明るい空間になりました。全体的に明るく、見通しの良いエントランスになったと思います。

明るい印象になったエントランスで何ができるか、ヒダコレのスタッフみんなで考えて、新しくベンチやデッキをつくることにしました。ヒダコレでは「森のベンチ」「無垢の木のデッキ」と呼んでいます。

ベンチに腰掛けながらお喋りしたり、近所のパン屋さんでパンを買ってきて食べたり、縁側のような場所にしたいと考えています。

森のベンチは什器や丸太の展示をずらりと囲むように。街の中でも森を感じていただきながらゆっくり休憩できるベンチを作りました。

ベンチ部分は、ブロックを積み上げて、座面にモミの木の板を選びました。ブロックが基礎にありながらも、優しい雰囲気になりました。こう言うところも木の良いところだと思います。

無垢の木のデッキは、耳付きの自然木をそのまま使ってデッキを作りました。全て飛騨の森で育った広葉樹です。広く取ったデッキではお子さんがお絵描きをしたり、ワークショップの開催も考えています。

森のベンチ、無垢の木のデッキは休憩場所、憩いの場としてご利用いただいています。お客様や観光客の方、ご近所のおじいちゃん、おばあちゃんも散歩の途中で一休みされている姿が映ります。

今回のリニューアルで天井や柱、壁を白く塗り替えました。店内の商品や、店舗を横断する什器がよく映るようになったのもそうですが、お客様が足を運びやすい印象になったことがとても嬉しいです。

サインも一新して、遠くからでも、車の中から見ても、すぐにヒダコレだと分かってもらえるようシンプルにロゴを見せるサインにしています。

最後は、ヒダコレがずっと欲しかった小さな丸太の展示。ここに展示されている丸太も元は森の一部として生きていた丸太です。分かっているはずだけど、いつもの生活で考えることはあまりないかもしれませんね。

丸太の展示は、森と暮らしが繋がっているということを、より身近に感じてほしいという思いで作りました。丸太ってあまりみないですよね?興味本位でぜひ見にいらして、実際に触ってみてください。

ヒダコレ家具は、木材を材料と思うだけではなくて、元々は丸太で、森で木として生きていたことを考えながら家具づくりをしたいのです。自然や社会、そしてこの飛騨高山という地域に少しでも「つくる責任」を果たせるようにと考えています。

使いたいと手に取った物が、どこで生まれ育ったものを材料にし、どんな人たちによって作られた物なのか。これは本当に必要かな、いつまで使って、使った先はどうするのかな。など、物を一つ取り上げても、考えることは沢山あります。この丸太の展示が皆さんの考えるきっかけの一つになれば嬉しいです。

新しくなったヒダコレ家具でお待ちしております。

次回は、1階内装編です。

店舗、リニューアルしました
1階内装編

2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」から「ヒダコレ家具」と改め、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとの繋がりを考えられるお店を目指しエントランス・内装をリニューアルしました。

前回の「店舗、リニューアルしました。エントランス編」に続いて、今回は店舗1階のリニューアルについて。

店舗リニューアルの一番大きなポイントになった店内を斜めに横断する什器をご紹介させてください。

この什器は、稲架(ハサ)と農業で使われる鉄のパイプ、広葉樹の木で作りました。

今ではお米を作る時に”ハサ掛け”をすることが少なくなっています。昔からお米作りをされている農家さんには先祖代々受け継がれてきたハサが沢山残っていたんですね。この稲架を何かに使えないかな?と設計士さんが提案してくださいました。里山や自然を身近に感じられる什器ができ、とても嬉しく思います。

什器内に見える角材は広葉樹の木です。この木は家具を作った残りの木を使うことにしました。木といっても様々な種類があります。それぞれの角材に特徴を書いてみました。全部同じ”木”ではないことが分かるとより家具を好きになってもらえる、そんな気がしています。

この什器をお店の中心にし、お店に並ぶ家具や一枚板である木が、どのような姿・形で地に根を下ろしていたのかを考えていただけるようなお店づくりを目指しました。

一枚板をお探しになっているお客様の中には「もう少し幅の広いのない?」「節はこんな感じが良い」など具体的なこだわりを持ってお探しになっていることも少なくありません。

幅が広く成長するために掛かる年月、節はどのようにしてできるのか、を少しでも感じ取っていただけると、ヒダコレ家具はとても嬉しいのです。「家具への愛着を持っていただきたい」というヒダコレ家具の思いがあります。そんな思いを店舗を横断し、どこからでも見えるこの什器に込めました。

什器を中心にした店舗1階のポイントは、お客様が居心地良く、考え事ができる空間を目指した事です。1番にお客様の暮らしを考る場所であるために「お客様に寄り添うってどういうこと?」「どういう空間だと愛着をもって家具を選べるかな?」など、スタッフで話し合いながら、一つ一つ決めていきました。

そして、ヒダコレ家具でお馴染みの「一枚板の家具」や、飛騨で活動する作家さんの作品を集めた「飛騨の手仕事」。さらに今回のリニューアルで新しく「小さな図書館」を作りました。

店内奥の壁面には、多くの一枚板を木の表情が分かりやすいように並べています。

一枚板は一つ一つ表情が違うので、お客様がお気に入りの一枚板をお選びいただけるよう、見やすく分かりやすい並べ方にもスタッフのこだわりが詰まっています。

多くの一枚板からお気に入りが見つかるように、壁にそのまま立てかけるのではなく、少し角度をつけて立てかける什器もスタッフのこだわりです。

ヒダコレ家具がずっと取り組んでいることがあります。それが飛騨の手仕事です。

飛騨の匠の歴史から続く工芸・民芸の文化と、飛騨の豊かな自然の中で丁寧につくられた作品には、作家さんの個性と温かみが溢れています。

木工や陶芸、ガラスなど様々な作家さんが一つ一つ思いを込めて、手作業で丁寧に作っているクラフト作品を知っていただき、”ちょっと暮らしや心が豊かになるような”飛騨のいいものに触れてもらいたいという思いがあります。

そんな飛騨の手仕事では、作品を一つ一つスタッフが直接セレクトしています。気になる作品がありましたら是非ご説明させてください。作品との良い出会いのお手伝いができると嬉しいです。

新しく作った小さな図書館は、少しずつですが「暮らしを考えるヒント」になる本を集めようと思っています。

小さな図書館は自由に使っていただきたい場所です。例えば、本を読んだり、お子さんがお絵描きしたり、座って店内を眺めたり。どんな使われ方がするのかスタッフもドキドキの小さな図書館です。

名前はまだありません、これから皆さんと一緒につくっていきたい。そんな場所です。

ちょっと余談。

店内のリニューアルから少し遅れて、お会計・ご相談カウンターができました。前は奥まった位置にあったので分かりにくかったですが、今回のカウンターでお客様が迷うことも少なくなったかな?と思います。

暮らしのことや森のこと、お客様と一緒に家具づくりのことを考えられるお店に少しでも近づけたかなと思っています。

家具だけではなく、作家さんの作品や、少し暮らしについて考えたいという時も、是非ふらっとお立ち寄りください。

新しくなったヒダコレ家具でお待ちしております。

家具屋だけど家具屋じゃない唯一無二の店づくり_澤秀俊さんインタビュー

2022年12月16日、直営ショップの店舗名を「HIDA・COLLECTIONくらしの制作所」改め「ヒダコレ家具」としてリニューアルオープンしました。リニューアルにあたって、地元飛騨の森や地域、そして家具づくりとがつながっていくような店にしたい、その構想に協力頂いたのが澤秀俊設計環境 / SAWADEEです。

今回は、澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表の澤秀俊さんにお話を聞きました。

澤秀俊さんの事務所外観


––リニューアルした店舗は、明るく開放的で、車窓からこのお店を見つけた人もついつい二度見してしまう興味を惹く店構えになっていて見違えましたね。今回のリニューアルのポイントを教えてください。

 外観は、入りやすさを重視して、開放的でわかりやすく、キャッチーな雰囲気を意識しました。白く塗ることで明るさを確保し、車窓から見えた時に「なんだろう」って思って入りたくなるような”ゲート”としての役割をもつエントランススペースを設けています。

ヒダコレ家具 ショップ外観

––そのゲートとなるエントランスから店内を横断する什器が一際目を引きますね。

 一般的なゲートは、面・個体としての存在感がありありとしているイメージを持っていますが、ヒダコレ家具のゲートは透明な背景という真逆の印象にしたかったんです。そして、ハサと農業用の支柱パイプ、広葉樹の木端を材料として作っているので、よく見てみれば見るほど、里山との繋がりも感じられる。さらに飾り方を場面場面で工夫することができるので、その時々で違った姿を発見できる仕様になっているんです。

ヒダコレ家具 ショップのエントランス風景

ハサ、農業用の支柱パイプ、広葉樹の木端を材料として作られた店内から外まで続く什器

––このお店の内と外を横断する什器のアイデアはどの段階から浮かんでいたんですか。

澤 この什器のアイデアは最初の打ち合わせ段階から思い浮かんでいました。
ヒダコレ家具のコンセプトは、澤秀俊設計環境や、ライフワークとして関わっているNPO法人活エネルギーアカデミーがやっていることにすごく近しいことを大事にしているなと、打合せの段階で感じていました。

店舗リニューアル打ち合わせの様子

 だからこそ、ヒダコレ家具には、林業を生業にするメンバーがいたり、普通の家具屋ならいないような人材がヒダコレ家具の事業に関わっている。仕事に対する想いは、すごくよく伝わってきました。
方向性を話し合う中で、いろんな物をまとめられるような中心(芯)になるものが要るかなというのは直感的に思ったんです。ただそれは強い確固たるものではなくて、スカスカで、大きくて、いろんなものが絡められる何か-、、考えていたときに関わりシロがあるでかいオブジェクトを作りたいと思い至りました。一番長さが取れる直行方向45度に置いて、お店が面している国道からも見えるように配置しています。

店内に什器が伸びる様子

––この什器のおかげで、念願の丸太のディスプレイすることが叶いました!丸太の横にあるベンチに座りながらお店の様子を眺めることもできていいですね。

澤 ベンチに使われているモミの木は、澤秀俊設計環境の近くで育ったものなんです。ベンチは、実際にストックしてある材料からヒダコレ家具の皆さんに選んでもらってこのモミの木に決まりました。樹皮が残っている部分もあり、とても可愛く仕上がっています。

エントランスにあるベンチ

コーヒーを飲みながら、犬の散歩がてら座って休憩も

––今回のリニューアルで澤さんがこだわったポイントを教えてください。

澤 大切にしたのは、それぞれのスペースに居場所を作ることです。これはヒダコレ家具だけではなく、自分が設計するときに必ず意識することなんですけど、回遊性を確保することはもちろん、お客様がスタッフや他のお客様のことを気にせずに過ごせるように設計しています。

店内を横断する什器

––「居場所」というと、ただ広さを確保するだけじゃないってことですか?

澤 そうですね。僕が3年暮らしていたベトナムは、半屋外の屋根の下でお風呂の椅子みたいなのに座ってコーヒー飲んだり、ビール飲んだりしているんです。日常の街の風景がお店から人が溢れ出している感じでリアカー引いてるおじちゃんおばちゃんがたくさんいます。

澤秀俊がインスピレーションを受けたベトナムでの日常の様子

澤 居場所(人の溜まり場)をつくる=入りやすさをつくる、ことだと思っていて、一枚板を見に行きたい!と思わないと行けないお店ではなくて、ふらっと店先まで見にこれる気軽さをつくりたいと思い、居場所を意識した設計にしました。

––ありがとうございます。最後に、これからのヒダコレ家具に一言

澤 ただの家具屋ではないところをどんどん進めていって、山と繋がってものづくりしていることをみんなに伝えて、みんなを山側に引っ張っていくような活動に転換してほしいですね。僕たちが活エネルギーアカデミーとしてやっている”ジョブエネ”も市民のみんなが気軽に山に入れるプラットフォームを担えるようにと活動を始めました。

活エネルギーアカデミーに関わっている皆さん

家具屋だと自分のブランドを前面に押し出していくのが一般的ですが、ザ・家具屋じゃない在り方を模索して展開していってほしいです。工房・山林ツアー、家具屋にきたつもりが全然違う世界に出会う。ものづくりの現場を身近にみれる。そういうのって重要だと思うんです。一般的な家具ユーザーは、椅子・テーブルを買ってそれを家で使っているだけで、それが何の木で、どこで育ってなんて全然わからない。ヒダコレ家具の皆さんがずっと伝えたい、やりたいと思っているのはそういうところだと思うので、それをどんどん面白い展開に、思っても見ないような家具屋になることを期待しています。

想いは同じだと思うから、色々できるといいなと思っています!

夕暮れのヒダコレ家具の様子。